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ハードランディングするアイドル達 Idols who making hard landing そいP『完全犯罪彼女』 

さて、今回はそいPのこの動画を取り上げたいと思います。



そいPの作品群に関してはいつか語りたいと思っていたのですが、このところのリアル多忙でなかなか書けずにおりました。というわけで、黒生こと『黒いテスト放送』にお邪魔した際に、赤ペンPの動画レビューにこの動画をリクエストして、レビュー対決!にすれば書けるのではないかと愚考した次第です。

いやぁ、心の底から後悔してます。大失敗でした。だって赤ペンPの膨大な知識に裏付けられた精緻なレビューと対決なんてできるわけないじゃないですか。ねぇ。もう泣きたいです。全然筆が進みません。わぁ、もう生放送30分前だよぅ。



というわけで、この作品に関するちゃんとしたレビューを聞きたければこちらで赤ペンPのレビューを視聴されることを激しくオススメいたします。

やさしいやさしい赤ペンPは私のレビューを添削するなんてカワイソウなことは決して考えないと信じています。本当に信じてるんだからね!

というわけで、私の貧相なレビューはこちらでございます。(ショボーン


アイドルというのは、歌がうまくてかわいくてなどという素材の問題ではないと思う。素材と客との関係性において発生する「状態」のようなものだ。" -ナンシー関



けだし名言です。アイドルとはある種の『状態』なのです。素材と客の『共同幻想』と言い換えても良いでしょう。これこそがアイドルの本質であり、表の顔です。

そして『状態』や『幻想』である以上、それは永遠に安定な物ではなく、いつかは不安定化し消失する運命にあります。そういう意味でアイドルとは賞味期間限定の商品と言えます。問題はいつ、どのように終焉を迎えるかです。

アイドルの終焉は、おおむね次のようなカテゴリーでもって2x2マトリックスに分割することができます。

1. どのように賞味期限を迎えるか、1)ハードランディング(墜落)する、2)ソフトランディング(軟着陸)する、
2. 芸能界から、1)引退しない、2)引退する、

     図1 アイドルの終焉マトリックス
アイドルの消滅マトリックス

全てのアイドルは基本的にソフトランディングを目指しますが、現実にはしばしばスキャンダル等でハードランディングせざるを得なくなります。ソフトランディングできないものなら、せめて芸能界に残る道を画策しますが、不幸なことにしばしばその試みも失敗に終わり、スキャンダルにまみれながら破滅することになります。そしてアイドルとして偉大であればあるほど、皮肉なことにハードランディングする危険性は高まるのです。

というのも、先ほど『状態』としてのアイドルを『表の顔』と表現しましたが、表があるならば当然のこととして『裏の顔』が存在するからです。それは素材としてのアイドルのリアルな姿です。リアルのアイドルは決してきれい事で済まされる存在ではありません。興味深いことに偉大なアイドルの多くは明るく光り輝く表の顔と同時に、暗く闇に閉ざされた裏の顔を持ちます。そして客はその裏の顔の存在を知りつつも、あえてそれを『気がつかないふりをして』、表の顔としての共同幻想に浸るのです。すなわち、アイドルとは表の顔の輝きと裏の闇の暗さを両眼で立体視しながら愛でる存在なのです。そして偉大であればあるほどそのコントラストは強くなり、アイドルとしての魅力は増すのです。

そういう視点からアイドルマスターを俯瞰するとき、いくつかの問題点が浮かび上がります。アイドルマスターとは『アイドル未満』の素材=少女達を、プロデューサーとしてアイドルたるべく育成するゲームですが、同時にプレイヤー少女達のファン=客としての要素も内包しています。つまり、アイドルの表の顔としての幻想を、作り手側と受け手側の両方の視点から眺めることを要求されるのです。これは二律背反と言わざる得ません。そして、それゆえアイドルマスターに登場する少女達には充分な闇の側面が用意されません。こうしてアイドルマスターに登場する少女達はアイドルとして『ぬるい』存在に陥る危険性をはらむこととなります。

非常に興味深いことに、ニコマスはこうした『アイドルの闇の側面』を補完することでアイドルとしてリアリティを強化してきた側面があります。

そいPのPV群はその一例でしょう。彼はアイドル達の闇とハードランディングによる芸能界からの追放=破滅の物語を徹底して描いてきました。

アイドルマスター 「赤橙」 やよいPV
では部落差別により芸能界から追放されるするやよいを

アイドルマスター 「Merry Christmas Mr.Lawrence」 雪歩・真
では同性愛により同じく芸能界から追放される雪歩と真を

アイドルマスター 「Tattooあり」 美希 PV
では自己の才能への過信により自滅する美希を

アイドルマスター 『――千早ちゃん、さようなら』 【VRF11】
では自己否定から自ら死を選ぶ千早を

描いています。これらの物語において、全てのアイドルは悲惨な運命に弄ばれ、情け容赦なくハードランディング=破滅していきます。

そして今回の
アイドルマスター 「完全犯罪彼女」 貴音
では、四条貴音の破滅が描かれます。

四条貴音は不思議なキャラクターです。大柄でグラマラスな肢体にもかかわらず、無重力感というか、存在感が希薄というか、ある種「この世の者ではない」雰囲気を漂わせています。NRRRで卓球Pが『外の存在』と読んでいましたが、言い得て妙だと感じました。彼女は、かぐや姫伝説に代表される『外の世界から来たお姫様』の系譜に繋がる存在ではないかと思うのです。

その四条貴音が『好きな男のために殺人を犯す』というのがこの動画の主たるストーリーであろと思われます。わかりやすいスキャンダルであり、もちろんのことながらアイドルにとっては破滅に至る致命傷となり得る話です。でも、この物語における『貴音の破滅』の本質はそこにはないように思うのです。

われわれの世界の倫理や規範にしばられない彼女は、そうと信じれば眉一つ動かさずに平然と殺人を犯してしかるべきであると思うのです。その彼女がこの世の住人である男を愛し、この世のの倫理観に従って罪悪感を感じ、そしてこの世のアイドルとして破滅していく。実に凡庸な物語です。そこにはリアルな貴音の闇はない。貴音のアイドルとしての魅力は、魅惑的な肢体に代表されるアイドルとしての表の存在と、なにかしら得体の知れない、この世の者ではない『非存在感』のコントラストにあるのだろうと思うのです。

そんな貴音にとって『外の世界から境界線を越えてこの世界に入ってしまった』こと自体が最大の悲劇であり、破滅であると考えます。『外の世界』の住人である貴音にとって、『わかりやすいスキャンダル』というもの自体が破滅であるべきなのです。

動画の最後で、貴音はあの屋上(通称『そい屋上』)で、千早が向こう側へ乗り越えた金網の前にしてがっくりと膝を付きます。向こう側=外の世界ではなく、こちら側=この世に残ることを選択したことによる静かな破滅がそこには感じられます。

映画『地球に落ちてきた男』でデイビッド・ボウイが演じる異星人、異星から地球にやってきたものの、地球の女を愛し、経済的に成功することで世俗に犯され、異星に残した家族を犠牲にしつつ怠惰に生き続ける男、その男がガックリと首をうなだれるラストシーンが重なりました。

『凡庸に犯されることの破滅』がそこにあるのです。

自分の解釈があっているかどうかはわかりませんが、そいPが今後も一貫して『アイドルの破滅』を描いていくことは間違いないだろうと思います。おそらくそれこそが彼が信じる『アイドルをプロデュースすること』なのであり、そのことによりアイドルをより魅力的に見せることができると彼は信じているのでしょう。

この先も、そいPの動画を楽しみに待ちたいと思います。


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